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最高裁判所第二小法廷 昭和27年(オ)536号 判決

主文

原判決を破棄する。

本件を仙台高等裁判所に差戻す。

理由

上告理由第一、二点について。

自創法一五条一項二号による宅地の買収に関する所論最高裁判所の判例の趣旨も買収農地の経営上必要な宅地であれば足る、他に何等の要件をも必要としないというのではなく、或はその宅地が必ずしも買収農地と立地上密接従属の関係あることを要しない旨を判示し、或はその宅地が従来、買収農地の経営上、その附属地として利用せられて来たという事実関係のあることを必要としない旨を判示したに過ぎない。本件買収のごとき同法一五条の改正法制定の前になされた場合においても、同条二項に記載されたごとき事情あるときは買収を相当としないことも、また当裁判所判例の示すところである(昭和二六年(オ)第五五九号昭和二八年七月七日第三小法廷判決、昭和二六年(オ)第二一四号昭和二八年一二月一八日第二小法廷判決)。さらに、買収農地の経営上必要であるといつても、当該宅地は、従前から賃借人の農地経営に利用せられて来たものであつて、買収農地は右従前の農地に比して著しく面積が少ないという場合のごときは、右宅地は同条によりこれを買収するを相当としないことも、また既に当裁判所の判例とするところである(昭和二五年(オ)第一九九号昭和二七年八月二三日第三小法廷判決、昭和二六年(オ)第九〇三号昭和二八年六月一二日第二小法廷判決)。

原判決は、右買収の要件として「単に同条第二項の除外事由がないばかりでなく当該宅地と解放農地との間に利用上密接な牽連関係が存することを要するもの」として、本件宅地は、右にいわゆる解放農地との間に利用上密接な牽連関係のないものであるから同条による買収を相当としないと判示しているのであるが、原判決が右利用上密接な牽連関係の有無の基準として上げている各事実関係(例えば本件宅地が、数ケ所に散在している農地から徒歩で十分乃至十五分を要する場所にあること等)は、同条による買収を相当としないことの基準とすべきものではなく、従つて、右のごとき事実関係を基準として、本件宅地の買収を不相当と判断した原判決は、結局同条の解釈を誤つたものといわなければならない。この点において上告は理由あり、原判決は破棄を免れない。

よつて本件については前示最高裁判所が判例によつて示すところの基準に従つて本件宅地の買収を相当とするや否やをさらに審理せしめるため本件を原裁判所に差戻すを相当と認め、民訴四〇七条に則り全裁判官一致の意見を以て、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 霜山精一 裁判官 栗山茂 裁判官 小谷勝重 裁判官 藤田八郎 裁判官 谷村唯一郎)

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